退職給付の総論
退職給付とは、一定期間にわたり、労働を提供していた事等の事由にもとづいて
退職以後支給される給付をいう。
「退職給付に関する会計基準」では
退職給付の性格:労働の対価として支払われる賃金の後払い
役員退職慰労金・特別割増退職金は適用対象外
(労働の対価との関係が必ずしも明確ではない為)
確定拠出型制度は適用対象外(企業運用リスクが無いので)
(「基準」の趣旨は企業が負担すべき退職給付に係る債務を適切に把握し、
財務諸表に反映させることである。)
退職給付の性格
①賃金後払説
②功績報償説
③生活保障説
役員退職慰労金・特別割増退職金⇒特別損失 (「基準」対象外)
確定給付制度:厚生年金基金など。運用リスクは企業にある。
確定拠出制度:日本版401Kなど。運用リスクは従業員が負担する。 (「基準」対象外)
退職給付会計
「退職給付に関する会計基準」では
「勤務費用」とは、期間の労働に対価として、発生したと認められる
退職給付をいう。
「利息費用」とは、割引計算により算定された期首時点における 退職給付債務において、期末まで時の経過により発生する
計算上の利息をいう。
「期待運用収益」とは、年金資産の運用により生じると期待される
計算上の収益をいう。
退職給付債務の算定方法
退職により見込まれる退職給付の総額(退職給付見込額)のうち
期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算する。
利息費用の算定方法
利息費用は期首の退職給付債務に割引率を掛けて算定
算定方法として現価方式が採用
退職給付は支出まで相当の期間があることから貨幣の時間的価値を
考慮にいれる必要があるため。
年金資産が退職給付債務から控除され、貸借対照表に計上されない理由
年金資産は退職給付の支払いの為のみに使用されることが制度的
に担保されていることなどから、これを収益獲得のために保有する
一般の資産と同様に企業の貸借対照表に計上するのは問題がある
財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがあると考えられる為
「退職給付に関する会計基準」では、退職給付見込額を合理的に見込まれる
退職給付の変動要因を考慮し見積る事の理由
実際の退職給付の支払いは退職時における退職給付の額
にもとづいて行われるものであり、現在時点での退職給付
の支払額のみにもとづいて将来の退職給付の額を見積ると
退職給付の実態が適切に反映していないと考えられる為
数理計算上の差異
数理計算上の差異とは、期首において数理計算にもとづき求めた
退職給付債務と年金資産の増減の予測値
と期末に測定した実際値との差異をいう
3つの数理計算上の差異
① 年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異
② 退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績の差異
③ 見積数値の変更等により発生した差異
「遅延認識」の理由
数理計算上の差異には、予測と実績の乖離のみならず予測数値
の修正も反映されることから、
各期に生じる差異を直ちに費用として計上
することが、退職給付に係る債務の状態を
忠実に表現するとは言えない面がある為
計算基礎の算定方法
退職給付会計における計算基礎の算定方法には、重要性基準と
回廊アプローチの2つの考え方がる。
重要性基準とは、基礎率等の計算基礎に重要な変動が生じない
場合には計算基礎を変更しない等、計算基礎の決定にあたって
合理的な範囲で重要性による判断を認める方法である
回廊アプローチとは、退職給付債務の数値を毎期末時点において
厳密に計算し、その結果生じた計算差異について、一定の範囲内
(回廊)は認識しない方法である。
「退職給付に関する会計基準」では、重要性基準の方法が採用されている
過去勤務費用
過去勤務費用とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の
増加額または減少額であり、退職金規定の改訂にともない退職給付水準が変更され
た結果生じる、改訂前の退職給付債務と改訂後の退職給付債務の改訂時点における
差額を意味する
「遅延認識」 過去勤務費用の発生要因は給付水準の改訂等が、従業員の勤務
意欲が将来にわたって向上すると期待のもとに行われる面から、費用収益対応の
観点による
会計基準変更時差異
会計基準変更時差異とは、退職給付会計基準の適用初年度の期首における 「退職給付会計基準による未積立退職給付債務」の金額と「将来の会計基準に
より計上された退職給付債務」の金額の差異である
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